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家賃を変更するためには

1 家賃を変更したい

  「家賃が安すぎる」「家賃が高いような気がする」「昔の家賃のままだった」そんなことで、家賃を変更したいと考える大家さんや入居者は多いでしょう。

  そんなときにどのような手続をとればよいのか、どのような注意点があるのか見ていきましょう。

 

2 家賃は一方的には変更できない

  家賃は、賃貸借契約によって決まっています。多くの場合は「賃貸借契約書」がありますが、万が一契約書が無いという場合でも、「毎月●●●円を支払う」ということが、大家さんと入居者の間で決まっているでしょう。

  この賃貸借契約は「合意」によって成立しています。つまり、大家さんと入居者が双方納得して家賃も決まっていることになります。そして、一度合意によって家賃が定まった場合には、その後一方的に変更することはできません。そのため、家賃が相場より高かったからといって「来月から1万円下げます。」ということが通用するわけではないですし、逆に「来月から3万円あげます。」と大家さんから申入れても、それだけでは家賃は変更されません。

 

3 双方が合意すれば変更可能

  家賃は合意によって成立した賃貸借契約によって決まっているといいました。

  つまり、この契約の内容を、大家さんと入居者の合意によって変更することはできます。この場合は、覚書を交わすか、または賃貸借契約書を作成し直すといった必要があります。

  話し合いを重ねた結果、お互い納得していくらか家賃を上げる、または少し下げるといったことに落ち着けば、その合意は有効ということになります。

<借地借家法>

第32条 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。

 

4 裁判所の調停を利用する。

  大家さんが家賃を上げたいと申し入れたけれども入居者が一切応じてくれない、逆に、入居者から下げてくれといったがゼロ回答だったといったような場合は、その状況を変えるために裁判所の「調停」という公的な話し合いの手続の申立てを行う必要があります。いきなり裁判で決着をつけたいと思っても、まずは話し合いをしなさいということが、法律で決まっています。

<民事調停法>

第24条の2 借地借家法(平成三年法律第九十号)第十一条の地代若しくは土地の借賃の額の増減の請求又は同法第三十二条の建物の借賃の額の増減の請求に関する事件について訴えを提起しようとする者は、まず調停の申立てをしなければならない。

 

 ですので、裁判所での話し合いを重ね、まずは落としどころを探る、そして、調停成立を目指すということがまずは目指すべき道ということになります。

 ちなみに、仮にお互いで具体的な落としどころが探れなくとも、裁判所の専門家である調停委員らが決めてくれるなら従うということを双方が合意できるならば、そのような形で最終判断を裁判所の調停委員らに委ねることもできます。

<民事調停法>

第24条の3 前条第一項の請求に係る調停事件については、調停委員会は、当事者間に合意が成立する見込みがない場合又は成立した合意が相当でないと認める場合において、当事者間に調停委員会の定める調停条項に服する旨の書面による合意(当該調停事件に係る調停の申立ての後にされたものに限る。)があるときは、申立てにより、事件の解決のために適当な調停条項を定めることができる。

 

5 訴訟を提起して判決を得る

  調停の中でもお互い落としどころを探れないならば、訴訟を提起して、裁判官に判決を出してもらうことになります。

 

 家賃が不相当で増額や減額ができるかどうかは、どのような鑑定結果が出るかといったこととともに、当初なぜその家賃になったのか、大家さんと入居者の関係性がどういったものかといったことにも影響されます。

 

 

 まずは現状の把握に加え、その後どのように動き始めるかといったところから、専門家に相談してみてはいかがでしょうか。