債務整理の手法に、特定調停というものがあります。
「特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律」に基づく手続きです。
今は任意整理(直接交渉)が柔軟になり、最近は弁護士の介入も多くなったのであまり活用されているとの話は聞きません。
開始は平成11年。当時は、クレジット会社に返済が苦しいと話をしても応じてもらえないとの状況が度々あり、第三者の介入を要することになったということでしょう。
特定調停も、裁判所で行う調停の1つですので、当事者の話し合いを調停委員と調停官(主に裁判官)が後押ししていく形になります。
ただし。何でもありではありません。
一定のルールがあります。
調停委員の団体が示すホームページには、以下の記載があります。
ただし特定調停の実施が困難なケース
次の場合には特定調停が出来ません。
A 月々の返済額が用意できない場合。
B 特定調停をしなくても支払不能に陥るおそれが無い場合。
次の場合には特定調停が出来ません。
A 月々の返済額が用意できない場合。
B 特定調停をしなくても支払不能に陥るおそれが無い場合。
基本的には数年で分割して支払うことがルールなので、借金をチャラにしてほしいというような要望は通りづらいのです。
この特定調停が、中小企業の関係で最近注目を浴びました。
それが、経営者保証ガイドラインにおける特定調停の活用です。
特定調停手続においては,債権者である金融機関を相手方とし,保証債務者で ある経営者が申立人となり,弁護士が申立人代理人として手続を主導していくことが想定されます。
というのが日弁連の記載ですが、中小企業の事業再生を図る際に、経営者保証の処理を特定調停を使ってやろうということです。
…ただし、活用実績は不明です。
この特定調停の活用が最も期待されるのは17条決定という裁判所が解決策を命じる形を取れる点です。
「裁判所は、調停委員会の調停が成立する見込みがない場合において相当であると認めるときは、当該調停委員会を組織する民事調停委員の意見を聴き、当事者双方のために衡平に考慮し、一切の事情を見て、職権で、当事者双方の申立ての趣旨に反しない限度で、事件の解決のために必要な決定をすることができる。この決定においては、金銭の支払、物の引渡しその他の財産上の給付を命ずることができる。」
仮に二週間の間にこの決定にに対して異議が出されなければ、裁判上の和解と同様の効力を有することになります。
債権者側も、様々な理由から任意で合意することが難しいということが多々あります。
そのような場合に、手続きの公正さや透明性、経済的合理性を考えたという前提で裁判所から決定が出されれば、敢えて異議は出さないということで応じるという可能性もゼロではないからです。
特定調停の申立費用は、総債務額に商事法定利率よりも当初利率が低い場合にはその利率を乗じたものを訴訟物の価額と、高い場合には6%をかけたものを訴訟物の価額として、手数料額を出します。
債務額が100万円であれば、500円になります。1000万円であれば3000円となります。
もちろん、裁判所の積極的な関与も必要ですが、個人の債務に関してももっと活用されて良いシステムのように感じます。